top of page
執筆者の写真知彦 寺澤

サバヒーの特徴:食性

旭海安溯水産の生物鏈養殖法ではサバヒーが重要な役割を果たします。会社の稼ぎ頭であり、養殖場の環境をコントロールする主役です。


日本ではほとんど馴染みのないサバヒーですが、2020年には全世界は1,283,921tonが養殖されており、インドネシア、フィリピン、台湾でほぼ100%生産しています。台湾では、台中から台南で広く養殖魚されています。



日本でも2000~2010年頃に鹿児島県や静岡県で養殖が試みられました。当時、カツオの一本釣りの餌用イワシが減少したため、代替の餌として試験的に養殖手法の開発が始まりましたが、実用化には至りませんでした。現在、日本で養殖している業者はいないはずです。


サバヒーは以下のような利点を持っています。

・プランクトンやデトリタスを食べる

・成長が早く、大きくなる

・養殖が容易である

・海水、汽水、淡水で生息できる

・栄養価が高い

逆に欠点は

・食べるときにニオイが気になる場合がある

・調理するときに小骨の処理が大変

・名前がイヤだ

・南方系の魚なので寒さに弱い


最も重要な特徴は食性です。ほとんどの海産養殖魚は餌に動物性タンパク質、つまり他の魚肉を必要とします。日本近海のイワシ類が少ないので、南米のアンチョビを飼料として輸入して養殖業が成り立っていますが、餌資源は貴重で高価なので、今後入手困難になってくると考えられます。

サバヒー養殖でも餌を使いますが、植物性タンパクの餌が利用できることや、養殖池で増える植物・動物プランクトンを食べる他、デトリタスや水底の付着藻類などを食べて育ちますので、餌料効率が非常に高い(餌が少なくて済む)魚です。


養殖池に餌を投入すると、残餌や魚の糞を介して池内の窒素やリンが過剰になる富栄養化します。一般には水質が悪化したと判断されますが、栄養は植物プランクトンを増やし、植物プランクトンは動物プランクトンに食べられ、これらをサバヒーが食べて魚肉に転嫁されるので、池内から栄養が除去されて水質が改善します。


フィリピンではほとんど餌を与えず、池内で自然発生した微細藻類マットやプランクトン・デトリタスを食べさせて育てる粗放的な養殖法もあります。微細藻類マットはLab-Labと呼ばれ、珪藻、緑藻、シアノバクテリアなどで形成されたもので、池の底に張り付いていて水中の栄養塩を吸収して増加します。サバヒーはLab-Labも良く食べるので、最終的には養殖池の水質を改善する働きがあります。


サバヒーをめぐる窒素やリンなどの物質循環についての研究は進んでいないと思います。文献はみつかりません。サバヒーの生物量と水質改善効果の関連も分かってはいません。このサイトでは少しづつでも、養殖池の水質管理とサステナビリティについて数値で把握できるようにしたいと考えています。


旭海安溯水產の多栄養段階養殖池で見かけた藻類(?)

調べてみましたが種名がわかりませんでした。専門家に確認します。

閲覧数:103回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page